ストーカー
「ストーカー」 1979
アンドレイ・タルコフスキー監督のSFである。前に見た「惑星ソラリス」もそれほどSFっぽい描写が多くあったわけではないが、今作ではさらになく、映像だけ見ている分にはSFかどうかすらよくわからないくらいになっている。
封鎖された「ゾーン」と呼ばれる地域には、願いをかなえる部屋があるという噂があった。教授と作家はストーカーの案内を得てその場所を目指すが・・・。
「ストーカー」は今ではどちらかというと犯罪的な意味で用いられることの方が多いが、ここでは「ゾーン」の案内人のような人間を指している。原作とされるストルガツキー兄弟の小説では、「ゾーン」は明確に異星人の来訪跡として描かれ、ストーカーはそこから異星人の遺物を持ち出す文字通り”獲物を狙う人”なので分かりやすい。しかし映画はそれに比べるとその設定をかなりぼやかしているので、「ストーカー」の意味自体もぼけてしまっている。
ほぼ全編が3人の男が寂れた地を歩きまわる描写で、その行程での会話がメインとなる。作家は自分本位で他者に批判的だが、結局理屈をこねて何もしない。教授は寡黙だが、最終的には自分の信じる正義に基づいて技術で解決を図ろうとする。どちらかというと朴訥なストーカーは最後まで2人に翻弄され続ける。そのあたりにいろいろな含みを持たせているのかもしれないが、映画としてはドラマが少なく、「惑星ソラリス」よりも若干退屈であることは否めない。
ただ、まぁ最後の最後で意外な描写をぶっこんできたことで、このお話全体がもっと壮大なSFストーリーの前日譚のようにも見えるようになったところが、ちょっと面白かった。
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