大和屋竺ダイナマイト傑作選
以前見た「殺しの烙印」や「裏切りの季節」の脚本を書いた大和屋竺のシナリオ集である。1994年初版ということで、もう30年も前のものだ。なので、残念ながら古本である。その古本ですらなかなか見つからず、定価5500円のところAmazonでは2万超の値段で出ている始末だ。で、時折検索していたところ、たまたま4000円台で出ているの発見し買ってしまった。
写真ではかなりきれいに見えるが、実はカバーはオリジナルに似せて私が作ったものだ。買ったものはとにかくカバーの状態がひどくていまにも切れて分解しそうなほどだった。幸い中身はきれいで汚れも書き込みもなかったのはよかったのだけどね。
オリジナルをスキャナーで読み取ってそのまま印刷しようと思ったのだが、いざ取り込んでみるとやはり粗が目立つので、極力似たようなフォントを探して活字部分を再現してみた。並べてみると微妙に違うのだが、単体で見る分にはわからない。ただ、インクジェット用の光沢用紙は質感はよいのだけど、表面が固いため折ったところが皺になってしまうのが欠点。とはいえ印刷用紙以外を使ってしまうと今度はインクの乗りが悪かったり滲んだりしてしまうので、そこはもう妥協である。
さて、中身だが、個人的にどうしても読みたかったのは、ルパン三世1stシリーズの2話「魔術師と呼ばれた男」のシナリオである。以前にも書いたが、このエピソードはルパン三世の中で一番好きなものなのだ。読んでみるとこのシナリオはかなり長い。アニメの一話は実質22,3分しかないのだが、感覚的に倍くらいの分量ある感じだ。解説によると演出の大隅正秋が長めに書かせた上で内容を圧縮したりそぎ落としたりして時間内に収めたらしい。
本編では冒頭パイカルが寝ているところをマシンガンでハチの巣にされ、犯人が去ったあとぎょろりと目を開けるとそこにサブタイトルが入るというかなり短いシーンなのだが、シナリオではパイカルは犯人たちを追い詰めて得意技で殺すところまで書かれている。つまりパイカルが何者であるかというのを冒頭で描写しているわけだ。本編ではあえてそこを切ってある意味パイカルという人間の不気味さを強調する形にしているのが面白い。
まぁ映画はそもそも切って切って極限まで切ってこそのものだと思うので、シナリオ全体のどこを切ってどこを生かすかの取捨選択こそが演出のセンスそのものなのだな。