ドロヘドロ
2020年冬アニメの一つとして始まったが、特に事前情報は仕入れてなかった。ただ公式サイトのイラストだけは見ていて、トカゲ頭の男と餃子を作っているらしい女が描かれていたので、てっきり異世界料理物なのかと思っていた。
が、実際は大分ちがった。血と暴力と魔法の異様な世界。この世界観は衝撃的。調べてみると原作は2000年から2018年まで連載されていた人気漫画らしい。今まで全く接点がなかったというのも逆になんかすごい。恋愛マンガとかそういう系だったらわかるが、どう見ても自分好みにもかかわらずなのに・・・。
Amazonで見たら、たまたまなのかアニメ化記念なのか、原作の1巻、2巻が無料だったので読んでみたのだが、読み始めたら止まらなくなってしまい、結局全23巻買ってしまう(^^;)
怒涛の大人買いである。
人間はホールと呼ばれる暗くじめじめした街に住んでいる。そことは別に魔法使いの住む世界があり、魔法使いはどこでもドアのようなドアでホールにやってくる。そして練習と称して人間に魔法をかけ、頭を動物にしたり虫にしたりしているのだ。彼らは魔法被害者とか呼ばれる。
ダークファンタジーというジャンルなのだろうが、ファンタジーともホラーともSFともつかない奇妙な世界観だ。特に魔法使いの設定だ。普通魔法というと、精神エネルギー的な魔法力みたいなイメージで描かれることが多いが、ここでは、魔法使いには魔法の煙を製造する臓器があり、体内からその煙を噴出することで魔法を使うのである。こんな烏賊の墨みたいな魔法の設定見たことない。
ここまで自分には思いもつかない発想を見せられるともうほんとにすごいという言葉しか出てこない。
作者は人体の内部構造を描くのが好きなのか、やたらと切り刻まれる描写が多い。主人公のカイマンは記憶を無くしていて、自分の本当の頭を探しているのだが、ナイフ使いであり、魔法使いを殺すときには切り刻む。また魔法使いの心は、人間を生きたままばらばらにする魔法を使うので、これまた切り刻まれた人体が出てくる。とにかく人の死が軽い世界なのだ。
しかし、暗い世界で血みどろな殺し合いを描いているわりに、作品自体のタッチは軽快だ。カイマンとその相棒の二階堂や魔法使いの心とパートナーの能井らのやりとりが軽妙であまりシリアスに寄っていないせいだろう。そのあたりのギャグとシリアスの配分のセンスがよいのだ。
作者は女性らしいのだが、いやはやすごい才能である。