座頭市海を渡る
「座頭市海を渡る」 1966
監督は池広一夫。主演はもちろん勝新太郎である。シリーズ14作目。このタイトルだと普通は海外編になるのが普通だが、今作の舞台は瀬戸内海を渡った先の四国である。
散々人を斬ってきた座頭市はその弔いのため巡礼すべく四国に渡る。しかし彼の名は彼の地にまで伝わっており、結局は村を狙う馬賊一味と戦うことになってしまう。
この馬賊との戦いというのが目に入ったので、それを期待して見たわけなのだが、馬賊も馬を降りればただのチンピラと変わらないわけで、まぁ特に変わり映えしないいつもの斬りあいだった。せっかく相手がヤクザとかではない馬賊なのに、なんで馬を降りさせるのかね。もちろん騎乗戦闘は殺陣も撮るのも難しいのだろうが、それが見せ場じゃないのかいな。
演出も冴えないし、脚本もひどい。脚本は新藤兼人ということだったのだが、どうにも首をひねらざるを得ないストーリー展開だった。
馬賊は村の掌握を狙っているようなのだが、馬賊が村人たちを迫害するような描写がないので、全然緊張感がない。ヒロインは無理やり頭目に嫁にされようとしているらしいが、そもそもその兄が博打の借金で首が回らなくなったのが元々の原因なので、あまり同情心が湧いてこない。終盤馬賊が村に攻めてくるが、それも座頭市がいるからであって村人に危害を加えに来るわけじゃないのだよね。
にもかかわらず、ヒロインは村人たちに座頭市を助けてくださいみたいなことを言って回るんだが、戦闘力0の農民が何十人もいる馬賊に立ち向かったところで、瞬殺されるだけだろう。
なんか村長が有名な座頭市にまかしとけばいいやみたいな悪人めいた描かれ方をしているし、座頭市に手を貸さない村人たちも薄情な人でなしみたいにヒロインに罵倒されるが、どう考えても馬賊に勝てないんだから、座頭市にかけるしかないんだよね。村人を悪人に仕立て上げる脚本には疑問しか浮かばない。しかも最悪なのは、ヒロインに惚れていた村の若者がヒロインにほだされて一人馬賊に立ち向かうのだが、当然瞬殺されたあげくヒロインには一顧だにされないという。なんとも後味悪い展開にドン引きである。
馬賊の頭目である山形勲がふんどし一丁で生き生きと悪人をやっているのはよかった。
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