スパイクス・ギャング
「スパイクス・ギャング」 1974
リチャード・フライシャー監督、リー・マーヴィン主演の西部劇。ではあるが、物語上の主役はどちらかと言うとゲイリー・グライムズ、チャールズ・マーティン・スミス、ロン・ハワード演じるところの3人の少年たちの方であり、物語もアメリカンニューシネマっぽい。
西部の田舎町に住む3人の少年はある日倒れている男を助ける。男は銀行強盗のお尋ね者ハリー・スパイクスだった。彼との出会いが少年たちの運命を狂わせてゆく。
リチャード・フライシャーは「ミクロの決死圏」や「ソイレント・グリーン」のようなSFから「トラトラトラ」のような戦争物まで幅広いジャンルを手掛けており、さらに今作のようなアメリカンニューシネマチックなものや「マンディンゴ」のようなセンセーショナルなものまでも撮っているのを見るとまさに巨匠という感じ。
リー・マーヴィンは以前見た「ポイント・ブラック」でも主演していたが、今作では立派な口ひげを生やしているせいかそのときのイメージが全くない。ただこっちの方が渋くてかっこいい。
厳しい父に反発して家出するも金がなくなり、いきなり銀行強盗してしまうがうまくいくはずもなく、逃げるときに議員を撃ち殺して即お尋ね者になるという、馬鹿の転落を絵に描いたような3人組が痛々しい。
リー・マーヴィンはしかしあくまでも悪党なので、俺のようにはなるなよみたいな綺麗ごとを一切言わないのがよい。助けてもらった礼に弟子にするつもりなのか、単なる捨て駒として使う気なのかその真意のわからぬまま彼は少年たちに強盗のテクニックを教えこんでゆくのが、どちらに転んでも少年たちの破滅的な未来しか見えてこなくて緊張感を高める。
3人の中のメインであるゲイリー・グライムズは、今作のあと映画1本とテレビドラマ2本に出たきり1983年には俳優業を引退している。チャールズ・マーティン・スミスは、このあとも「アンタッチャブル」などに出演しており2010年くらいまではバイプレーヤーとして活躍していた。ロン・ハワードは監督に転身し、「コクーン」「バックドラフト」「ダ・ヴィンチ・コード」「ハン・ソロ」など多くのヒット作を撮っている。
アメリカンニューシネマの常ではあるものの、主人公たちに幸せな未来がないのがなんとも悲しい。
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