首
10月 5th, 2024 by PureJyam
「首」1968
今、映画で「首」というと、北野武監督の方を思い浮かべてしまうのだが、これは1968年公開の全然違うもの。去年ようやくDVD化された。
監督森谷司郎、脚本橋本忍、主演小林桂樹の社会派ドラマ。昭和19年、戦争のさなか茨城県の炭鉱の村の留置場で死んだ男の死因は脳溢血かそれとも警官による暴行か。弁護士の正木は司法解剖を求めるが・・・
事前情報を入れずに見たが、どうやら事実をベースにした物語らしい。原作は正木弁護士自身が書いたものである。
小林桂樹がやはりよい。序盤の事件を軽く扱う感じから、徐々にのめりこんでゆく変化の演技がすごいね。小林桂樹は、この5年後にも森谷監督と「日本沈没」を撮っているが、そこでの田所博士もこんな感じの印象だった気がする。
1968年当時は既にカラーのシネマスコープで撮るのが一般的だったが、今作はモノクロのスタンダードサイズで撮られている。それについて言及されたものは見つけられなかったが、恐らく監督の意向なのだろう。描かれた時代と内容からして、確かにこの方が効果的に思われる。
事実ベースの社会派ストーリーなのだが、終盤の緊張感は安っぽいサスペンス物をはるかに超えるもので、脚本と演出のうまさが光る。森谷監督は53歳という若さで亡くなったが、本当に残念だ。
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